名前 Name | 茅根 創 Kayanne Hajime |
生年月日 Birthday | 昭和34年11月9日生 |
研究分野 Field of study | 地球システム科学,サンゴ礁学,古環境変動,海岸地形学 |
研究テーマ Research topic | 地球温暖化に対するサンゴ礁の応答を,フィールドと実験室において解明して,サンゴ・サンゴ礁自身が記録している環境変動・人間活動影響の記録を読み取り,複合ストレスに対する応答モデルを構築します.それに基づいて,適切なストレス制御と再生策を提案し,人とサンゴ礁の新たな共生系を構築することを目指します. |
所属機関 Organization | 東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 教授 |
所在地 Adress | 〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 本郷キャンパス 理学部1号館6階633号室 |
TEL | 03-5841-4573 |
FAX | 03-5841-4690 |
kayanne_at_eps.s.u-tokyo.ac.jp (please replace “_at_” with “@”) | |
学歴・履歴 | |
1978年 | 私立武蔵高等学校卒業 |
1978年 | 東京大学教養学部理科II類入学 |
1980年 | 東京大学理学部地学科地理学課程進学 |
1982年 | 東京大学大学院理学系研究科 地理学専門課程修士課程入学 |
1984年 | 同大学院博士課程進学 |
1988年 | 同単位取得退学 |
1988年 | 通商産業省工業技術院地質調査所 海洋地質部研究員 |
1989年 | 学位取得(東京大学理学博士) |
1992年 | 通商産業省工業技術院地質調査所 海洋地質部主任研究官 |
1995年 | 東京大学大学院理学系研究科 地理学専攻 助教授 |
2000年 | 東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 助教授 |
2007年 | 東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 准教授 |
2007年11月〜 | 東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 教授 |
併任 | |
2013年4月〜 2019年3月 | 東京大学海洋アライアンス海洋教育リテラシープログラム長 |
2019年4月〜 | 東京大学教育学研究科附属海洋教育センター 副センター長 |
委員等 | |
学外 | 第10回国際サンゴ礁シンポジウム 組織委員会事務局長 |
JICA パラオ国際サンゴ礁研究センター支援委員会委員 | |
日本サンゴ礁学会評議員・事務局長(2012~2017年度) | |
(社)日本サンゴ礁学会,理事,2018年度 | |
(社)太平洋協会太平洋諸島学会,理事,2017~2018年度 | |
海洋政策研究財団 島と周辺海域の持続可能な開発の推進に関する調査研究委員会,委員,2012〜2017年度 | |
(財) 水産土木建設技術研究センター 厳しい環境条件下におけるサンゴ礁の面的保全・回復技術開発実証事業(水産庁委託事業)サンゴ礁の面的保全・回復技術検討委員会 委員,2012〜2017年度;委員長,2018年度 | |
(財) みなと総合研究財団(国土交通省委託事業)特定離島港湾施設整備に係るサンゴ移植分析評価に関する検討会 委員,2012〜2018年度 | |
(財) 国土技術研究センター 沖ノ鳥島保全研究会(国土交通省委託事業)沖ノ鳥島保全研究会 委員,2012〜2016年度 | |
防衛省 普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会 委員,2012~2018年 | |
国土交通省 サンゴ礁海岸保全研究会 委員,2017~2018年度 | |
学内 | 理学部・理学系研究科教務委員長,研究科長補佐 2008年度 |
空間情報科学研究センター運営委員会委員,2012〜2018年度 | |
総合研究博物館 運営委員会委員,地理資料部門長,2012〜2018年度 | |
理学系研究科,広報委員会 広報誌編集委員.2017〜2018年度 | |
専攻内 | 機器分析委員会委員長 (2001~2005年度) |
技術職員委員会委員 (2002年度~) | |
安全管理委員会副委員長 (2004年度~) | |
理学部地球惑星環境学科教務委員長 (2006〜2007年度) | |
地球惑星科学専攻.教務委員会,委員長,2012年度 | |
地球惑星環境学科,学科長,2013年度 | |
地球惑星物理学科・地球惑星環境学科,教務委員長,2018年度 |
研究分野 地球表層システム学,サンゴ礁学,地球規模変動
地球環境,生態系と人間社会は,人新世という,地球史上6回目の大量絶滅イベントを伴う,地球規模変動の時代に入りました.地球科学者は,現在起こっている変化の予兆を精確に記述,予想,警告し,それに基づいて非線形な変化の閾値を定め,可能な緩和・適応策を提言し,対処する責務があります.
サンゴ礁は,地球環境変化のすべてのシナリオと密接に関わって,もっとも敏感に,いち早く応答した地球規模変動のモデル生態系です:CO2濃度増加による海洋酸性化による石灰化の抑制・溶解;地球温暖化によるサンゴ礁の大規模白化;海面上昇による環礁州島の水没.1998年の地球規模白化は,生態系規模の地球温暖化応答の最初の例とされます.それ以降20年間の白化イベントと回復過程の調査結果と記録に基づいて,白化の度にサンゴ礁の復元力が衰えており,構成種が代わったことを明らかにし,深刻な白化の閾値が+2度であることを明らかにしました.
海洋酸性化について,酸性化がpH 7.8まで進むと造礁サンゴ群集が骨格を持たないソフトコーラルに代わることを明らかにしました.また,海洋酸性化の指標としてアルカリ度の重要性を指摘し,その微量連続計測装置の開発に成功しました.
海面上昇について,州島の形成メカニズムに基づいて,ツバルなどの環礁においてサンゴ礁生態系の劣化が,海面上昇に対する国土の維持能力を弱めていることを明らかにしました.RCP2.6シナリオの+2℃が,サンゴ礁の維持が可能な閾値です.地球環境変化の諸要素は,サンゴ礁に複合的な影響を与え,フィードバックを通じて閾値を越えると相変化をもたらす.地球環境変化に対するサンゴ礁の応答について構築されたモデルは,人間社会を含む他の生態系にも適用することができます.
RCP8.5シナリオでは,世界のサンゴ礁は2070年までに消滅すると予想されています.地球規模変動に対するサンゴ礁の応答に関する調査,研究成果に基づいて,将来の変化に対する緩和・適応策を提案し,試験・実施します.1) これまでに確立した,サンゴの種苗生産技術に基づいて,群集・生態系スケールでサンゴ礁を修復する技術を確立します.自然・人為選択によって,高水温や高CO2耐性を持つサンゴを育成し,現場で試験します.2) 海洋酸性化評価のために開発した小型連続pH-アルカリ度測定システムを,ブイやフロートに搭載して,これまでpH しか計測されていなかった海洋の炭酸系の連続直接計測の道を拓きます.また少なくともローカルな酸性化影響を緩和するために,サンゴの石灰化と海藻の光合成を共役させ,両方の生産を上げることを,その経済効果とともに評価します.3) 低平な環礁国家において,海面上昇に対する復元力の高い国土を造るために,国土を造るサンゴの種苗とそのための環境修復を行います.また,サンゴ礫の集積効果のある透過型護岸と,その固化を,現地において試験開発します.科学に基づくこれらの操作は,社会-経済的に受容される方法で適用します.サンゴ礁における緩和・適用技術の確立とその適用は,地球科学,環境学,生態学だけでなく,社会・政治・経済学を横断する超学際研究として,人新世における生態系と人間社会維持のモデルケースになるでしょう.
サンゴ礁というひとつの対象に対して,これだけ研究の広がりがあることに驚かれたのではないでしょうか。 しかし,ここで紹介したのはいずれもそれぞれの研究のさわりでしかありません。 サンゴ礁の持つ多様なプロセスを入り口にして,それぞれの分野を深めて地球システムの仕組みを理解することが私たちの目標です。 ただその時も,他の分野についても幅広い理解を持つことが必要です。
学生さんも,地球科学だけでなく生物学,化学など他分野出身の学生もおり,学位をとっています。 これまでの博士論文の内容は,サンゴ礁の生物分布と地形形成,海面変動との関係(地学),サンゴ幼生の分散とサンゴ群集の分布・海洋環境との関係(生物学),サンゴ年輪による過去の海洋環境の復元(古海洋学),サンゴ礁の生物活動と炭素循環との関係(海洋化学)など様々な分野に及びますが,そのどれもが他のプロセスとの関係を意識しています.浅く広くでは困りますが,ある部分(できれば2つ)については深く,同時に広くという研究の仕方を薦めています。
また,フィールド調査をベースにしています。 環境問題といってもコンピューターの画面のシミュレーションだけというのではなく,現場での観察・観測と調査をベースにしたいと考えています。 ですから,南の島が好き,海が好きという学生さんも大歓迎です(実は私もダイビングがきっかけでこの道に進んだのです)。 研究は厳しいだけでなく,楽しくなくては続きませんから。